おわりに 〜成果と次への課題〜

HOMEはじめに 本稿の考察対象と研究目的序章 雇用政策の形成第1章 国による障害者雇用政策の形成第2章 東京における授産施策の展開第3章 東京都における障害者就労支援政策の確立と展開おわりに 〜成果と次への課題〜障害者就労支援政策に関する年表参考文献


 

 筆者は本稿で、「障害者雇用促進政策」と「障害者就労支援政策」とを敢えて区別して論じるよう努めてきた。前者は国の政策であって、障害者にとって一般就労を可能ならしめるところに行政ニーズがあると認定していたと考えられる。一方、後者は東京都が小規模作業所の支援を行う際の政策であり、第3章冒頭で取り上げた志賀東京都副知事の発言にある通り障害者にとっては、地域社会の中に生活の基盤を持つことに行政ニーズがあると認定していたと考えられる。現在の障害者自立生活運動が目指すところと同じであるだろう。
 基礎自治体である市町村・特別区のみでは担いきれない政策を広域自治体である都道府県が担い、都道府県が担いきれない政策を中央政府としての国が担うとするのが、通常想定される政府間の役割分担である(補完性の理論)。ところが、障害者の労働という政策課題に関していうと、国が政策対象とする障害者を限定し民間企業に対して責を求めることによって政策実現をはかろうとする障害者雇用促進政策を実施することで、そこから漏れた行政需要を地方自治体が行政ニーズとして認定し障害者就労支援政策を確立しようとしてきたのである。さらにいうならば、障害者がその能力に合わせた形での就労の場を創り出してきたのは、「親の会」や当事者団体の運動の一環であったのである。
 この過程を、国が怠ってきた政策を地方自治体や運動体が担ってきたという見方もできるだろうし、逆に地方自治体や運動体が国に先んじて独自の政策を開発してきたと見ることもできよう。ただ、いずれの評価を行うかは、本稿で当初設定した考察視角を越えるものとなってしまうので、ここでは敢えて避けることとし、行政需要と行政ニーズの概念による考察に止どめることにする。
 当初設定した目標がどの程度達成できたのか、いささか自信がないところであるが、本稿を今後の研究の礎にしていけるならば、筆者にとってこの上ない幸いである。



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