東京都による「障害者就労支援政策」の形成に関する一考察 〜小規模作業所への補助施策を中心に〜  (法政大学大学院政治学研究科 高木章成)


【修士論文要旨】

 戦後、国の障害者就労支援施策は傷痍軍人対策に始まり、身体障害者、知的障害者、精神障害者に拡大することにより、雇用の機会の保障のための施策に転換していく。当初、国、地方自治体とも、生活の糧を求める障害者に対しては、施設収容や授産事業による対応をしていた。しかし、1960年の「身体障害者雇用促進法」制定、1976年の同法改正による義務雇用制度の民間への適用と雇用納付金制度の導入によって、民間企業にも積極的に障害者の雇用保障に責を求めようとするに至った。ところが、この過程で一般就労が困難な者はこの制度の外側に置かれるようになった。
 東京都においても、法定の授産施設を設置して対応していたが、1960年代に入ると都立心身障害者福祉作業所の設置のように独自の政策への模索が見られ始めた。また、大都市部を中心とする革新自治体の成立は、共同作業所運動を勢いづけた。この運動は、都における独自の政策を展開する契機となった。1970年代以降の障害者運動や「親の会」による運動により、障害者の自立と社会参加が政策課題として表面化してきたことによる。
 一方、国は1975年、労働省が身障者雇用に不熱心な企業名の公表を開始し、民間により一層の責務を求めた。ところが、高度成長の終焉などで雇用率は微増から停滞へ転じる。この時期、革新都政は財政的な行き詰まりを見せ始めるが、小規模作業所への補助額は大幅拡充が続けられた。
 この政策分野において、国は民間企業にその責を求める傾向にあるが、都は当事者や親たちの運動としての小規模作業所を支援する独自の政策によって、行政需要を発見し行政ニーズとして認知し、その充足をはかってきたといえよう。



【目次】

はじめに 本稿の考察対象と研究目的

序章 雇用政策の形成
 第1節 労働政策前史
 第2節 障害者雇用政策前史

第1章 国による障害者雇用政策の形成
 第1節 「身体障害者雇用促進法」制定に至るまで
 第2節 「身体障害者雇用促進法」の制定
 第3節 「身体障害者雇用促進法」制定による障害者雇用政策の形成
 第4節 雇用納付金制度の導入とその後の改正による政策動向
 第5節 小括

第2章 東京における授産施設の展開
 第1節 授産事業のはじまり
 第2節 障害者授産施設の展開

第3章 東京都における障害者就労支援政策の確立と展開
 第1節 「共同作業所」の誕生とその展開
 第2節 小規模作業所支援施策の開始とその展開
 第3節 民営授産グループに対する補助主体の変更
 第4節 小括

おわりに 成果と次への課題

障害者就労支援政策に関する年表

参考文献

【各章へ】

はじめに 本稿の考察対象と研究目的
序章 雇用政策の形成
第1章 国による障害者雇用政策の形成
第2章 東京における授産施策の展開
第3章 東京都における障害者就労支援政策の確立と展開
おわりに 〜成果と次への課題〜
障害者就労支援政策に関する年表
参考文献